丹中山

たん ち やま

丹中山の墓地に関する請願書ならびに

現行墓地埋葬法の改正を要望する意見書提出についての請願書


平成10年6月17日

高知市議会議長 杉村 善夫 様
紹介議員
      岡部 忠孝
      小崎千鶴子
      中沢はま子
      楠本 正躬

丹中山の墓地を守る会
高知市平和町97-7
会長 野田 幸義

丹中山の墓地に関する請願書

 4月21日開催の総会における協議に基づき、次のとおり請願いたします。
 三百余年来の貴重な墓跡が今日なお残っている高知県・市民の歴史ある墓地山、丹中山の開発は基本的に絶対反対であります。
1.丹中山にある墓で、子孫や有縁者が管理しており、その旨、市又は開発業者に申し出ているものについては、絶対に開発の対象としないよう開発業者に十分徹底されたい。
 また、申し出てはいないが、明らかに墓参者がいると認められる墓についても、前記に準じた指導をされたい。
2.各々の墓地に通ずる参道の確保、保全についても徹底した指導をお願いする。
 江戸時代から入会墓地山となり、土佐の歴史の実証とも言うべき墓の多い丹中山は、市民の文化遺産とも考えられるので、行政が特別の保存対策をとるようお願いしたい。
3.丹中山は、市街に隣接し、かつ、余りにも墓が多いので、無造作に樹木の伐採、あるいは土石の移動を行うと、市民の眼に多数の墓石が露出し、人骨が散乱するといった公準良俗の上からも好ましからざる情況が出現すると思われるので、保全については特に慎重に考えられたい。
4.現行の「墓地埋葬法」(昭和23年制定)の墓地所有者への開発通知方法は、当時は新聞・ラジオしかなく、また終戦後の閉塞的な社会情況の中で現代社会の実態に合わなくなっているので、改正するよう国に対し働きかけられたい。

以上

高知市議会議長 杉村 善夫 様

高知市平和町97-7
丹中山の墓地を守る会
会長 野田 幸義

紹介議員
      岡部 忠孝
      小崎千鶴子
      中沢はま子
      楠本 正躬

現行墓地埋葬法の改正を要望する意見書提出についての請願書


 「この前にお参りしたお墓がなくなっていた」という常識では考えられないことがある。これは現行の墓地埋葬法施行規則第3条第2項に起因して生じたことである。「昭和23年7月13日厚生省令第24号」は、今から50年以前に制定発令された。前述の施行規則はこの中にある。
 開発等に伴う無縁墓への改葬には「2種類以上の日刊新聞に3回以上広告し、その最後の広告の日から2ヶ月以内に縁故者からの申し出がないこと」が条件の一つになっている。
 この広告は、5.6センチ×2段程度の小さなもので、地方紙、全国紙等の指定もなく、申出許容期限も短期すぎ、今の時代にそぐわない不確実、一方的な広告方法である。
 なぜ今の時代にそぐわないのか、この法令が制定発令された当時と今の時代を比較して述べる。
◎当時
 昭和23年という敗戦後3年目の混乱期で、廃土と化した国土の復旧再建に取り組み始めたころである。当時国民は、情報と活字に飢えていた。国民の情報源はラジオと新聞のみで、特に新聞は、スミからスミまで目を通すほどであった。多くの国民の生活拠点も「生まれ住んだ」ところから離れがたく、出郷する者も少なく、国外渡航などは厳重な制限化にあった。
◎現代は、
 テレビが主役で、新聞は購読していても、日々必ず全面に目を通す者も少なく、見出し程度か、興味ある記事、関係のある記事以外は読もうとはしない。また、新聞広告もいかに読者にアピールするかと大型化傾向にある。国民の生活は忙しく、ビジネス面の多様化・多忙化で、国民の生活拠点も郷土から遠く離れ、また移り住む者が多い。一方、国際化時代と言われ、国外居留者も増えている。
◎墓参り
 かつては、命日、春秋の彼岸・盆・正月と年間数回もお参りしていたが、今は上記の事情と合わせて核家族化・老齢化で墓参頻度は減少している。年間1,2回の家が多く、2,3年墓参に帰れなかったという者が少なくない。このような実情であるから、現行の埋葬法は時代にそぐわないのみならず、許可権限者である市町村でさえも戸籍による追跡調査に日時もかかり、難しさが増している。
◎現行埋葬法の悪用
 今の時代は「他人の墓だから・・・」と墓の尊厳さも無視して、シャベルで壊して平気でいる。現行の埋葬法を利用して、利益追求の資にする者が多い。
 一方、先祖や家族を祀る墓は、その家族にとっては、精神的な支えであり、心のよりどころともなっていて、苦しいとき、人生に挫折したとき、または喜びのとき、その墓に詣でて対話することで、心の安らぎを得、挫折から立ち直るという非常に大切かつ重要な役割をも持っている。
 「無縁墓にされるのではないかと思うと毎晩眠れなくて」という訴えをよく聞く、無縁墓とされる被害者の心の痛手を自分のものとして考えれば、この施行令は善良な国民に涙ささないためにも早急な改正が必要となる。
 よって、高知市議会におかれましては、前記の状況をご理解され、国に対し意見書を提出していただきたく請願いたします。